コラム columns
以前から知られてはいましたが、診断基準がなかったために「あれってなんだろね?」と言われていた病気【前庭性片頭痛】について今回は紹介したいと思います。
前庭性片頭痛とは
片頭痛が原因となりめまいを生じる疾患です。片頭痛の患者さんに眩暈を伴うことは昔から知られていましたが、近年その疾患概念が確立され診断基準が作成されました。
その原因についてはまだ解明されていませんが、三叉神経からの神経伝達物質の過剰な分泌がめまいに何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆されています。
前庭性片頭痛の特徴
・30〜40歳代に多く、女性が男性の3〜4倍と多い。
・めまいの持続時間は5分から3日間と幅が広い。
・日常生活に支障をきたす中等度から重度のめまいが生じる。
・光や音、匂いに対して過敏になり部屋に閉じこもりたくなる。
・めまいと共に頭痛を認めることがあり、日常生活の動作で頭痛が増悪する。
・生理や月経とめまいや頭痛が連動する。
・目の前にギザギザした線や光が見えることがある。
前庭性片頭痛の検査
前庭性偏頭痛を特定できる特殊な検査は現在のところありません。臨床症状や経過の特徴などを踏まえて診断することになります。
また、予防治療を実際に開始し、効果を認めることで診断につながることもあります。
前庭性片頭痛の治療
前庭性片頭痛の場合、めまいと頭痛の治療に別れ、予防治療と急性期の治療に別れます。今回はめまいの治療を紹介します。
予防治療
・塩酸ロメリジン(ミグシス®)5mgを1日2回服用
・バルプロ酸ナトリウム100~200mgを1日2回服用
・漢方(呉茱萸湯・五苓散など)
これらの予防治療は効果が判定できるまで1ヶ月以上かかります。気長に服用することが重要です。
頭痛体操:片頭痛では肩周囲の筋緊張が頭痛の増悪因子であるため、肩周囲の筋緊張をほぐす体操が有効なことがあります。方法については当院にご相談ください。
急性期の治療
・ベタヒスチン6mg2錠を1日3回服用
・ATP顆粒1gを1日3回服用
・炭酸水素ナトリウム(メイロン®)の点滴
などが効果を認めるとされています。
前庭性片頭痛の診断基準
下記の項目を満たせば診断となります。
診断基準
A. 少なくとも5回の中等度から重症の前庭(めまい)症状の発作が5分から72時間続く
B. 現在或いは過去に国際頭痛分類での診断基準を満たした片頭痛を認める。
C. 前庭発作の少なくとも50%に次の一つ以上の片頭痛兆候がある
・次のうちの二つ以上の特徴を持つ頭痛。
片側性
拍動性
中等度から重度の痛みの強さ
日常動作による痛みの増悪
・光過敏と音過敏
・視覚性前兆
D. 他の前庭疾患や国際頭痛分類の診断基準にあてはまらない
最後に
この疾患で生じるめまいは日常生活に支障をきたすレベルなことが多く、繰り返すためストレスや不安から精神面への負担が大きい病気といえます。また、予防治療を行うことでめまいの程度や回数が改善することが可能です。この病気に当てはまるかもと思われる方はぜひ当院副院長にご相談ください。