いびき、睡眠時無呼吸(手術) Snoring, Obstructive Sleep Apnea Syndrome: OSAS, and Surgery

Obstructive Sleep Apnea Syndrome: OSAS 閉塞型睡眠時無呼吸症候群

睡眠専門医が診断・原因検索・治療を行います

睡眠専門医が診断・
原因検索・治療を行います

当院の3つの特徴

  • 日本睡眠学会認定のOSAS専門医が睡眠時無呼吸症候群の診療を担当
  • 一泊下でのポリソムノグラフィー睡眠検査による精度の高い診断が可能
  • CPAPだけではなく、OSASに関係する鼻づまりやいびきの手術・治療も施行

日本睡眠学会専門医は睡眠医療の幅広い知識と
診療能力を持ち、一定以上の睡眠臨床に携わった医師を
証明・認定するものです。
日本に700名ほどしかおらず、まだまだ非常に
少ないのが現状です。

当院ではいびきの治療も行っています。

閉塞型睡眠時無呼吸症候群についてObstructive Sleep Apnea Syndrome: OSASについて

普段私たちは寝ている時でも呼吸をしています。しかし、睡眠中に呼吸ができなくなる無呼吸状態が繰り返される病気があります。この病気を睡眠時無呼吸症候群と呼びます。特に呼吸をする際に上気道が閉塞してしまうことで肺に空気が入らなくなってしまう状態を閉塞型睡眠時無呼吸症候群と呼びます。
就寝時だけ起こるのが特徴で、日中は普通に呼吸ができているのでなかなか気づくことができません。
糖尿病は食後に血糖値が高くなりすぎることで様々な症状や合併症を引き起こしますが、睡眠時無呼吸症候群は寝ている間の低酸素血症による睡眠の質の低下が、日中の眠気や交通事故、血管の硬化による脳梗塞・心筋梗塞・癌などの深刻な病気の引き金となります。
日本には940万人の潜在患者がいると言われ、その中で実際に診療を受けている方は70万人程度しかいないとされており、多くの方が見過ごされている状態となっています。

OSASが引き起こす社会的影響

  • 日中の眠気や集中力低下

    日中の眠気や集中力低下

    呼吸が苦しいため、質の高い睡眠が取れず、十分寝た気がしない、だるさが取れないなどの症状が続きます。そのため仕事や家事など日中にまで影響を及ぼします。

  • 交通事故や労働災害

    交通事故や労働災害

    睡眠時無呼吸症候群の人が交通事故を起こす頻度は一般ドライバーの2〜7倍と言われています。また、居眠りや作業ミスによる学力低下や労働災害も多数報告されています。

OSASによるリスク

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 心筋梗塞
  • 脳梗塞
  • 認知症
  • うつ病
  • 不妊症
  • 癌など

OSAS患者の約50%は高血圧を合併していると言われています。また、OSASによる低酸素血症がインスリンの動きを悪くさせ、糖尿病に繋がることが報告されています。低酸素血症は血管を硬化させ血液をドロドロにすることもわかっており、心筋梗塞や脳梗塞などの問題を引き起こします。
脳卒中は健常者に比べて発症リスクが約5倍高まることが明らかになっています。重症のOSAS患者はOSASのない人に比べて4.8倍癌になりやすく、癌による死亡率も7.2倍高いことが報告されています。

OSASの症状

成人における早期発見の8つのポイント

  • 01. いびきがひどい
    01. いびきがひどい
  • 02. 夜間に呼吸が止まる
    02. 夜間に呼吸が止まる
  • 03. 朝の目覚めが悪い
    03. 朝の目覚めが悪い
  • 04. 日中の眠気や倦怠感
    04. 日中の眠気や倦怠感
  • 05. 起床時の頭痛
    05. 起床時の頭痛
  • 06. 夜中のトイレが多い
    06. 夜中のトイレが多い
  • 07. 夜間突然の息苦しさ
    07. 夜間突然の息苦しさ
  • 08. のど風邪をひきやすい
    08. のど風邪をひきやすい

OSASにより夜間呼吸が止まることで酸素を取り込めず質の悪い睡眠となります。そのため、朝起きられず日中の眠気が強くなります。
また、夜間の苦しさにより頭痛、夜間頻尿、突然起きてしまうなどの症状が起きます。

小児における早期発見の7つのポイント

  • 01. 発育の遅れ
    01. 発育の遅れ
  • 02. 学力の低下、
    学校での居眠り
    02. 学力の低下、学校での居眠り
  • 03. 集中力の低下
    03. 集中力の低下
  • 04. イライラして怒りっぽい
    04. イライラして怒りっぽい
  • 05. いつも口を開けている
    05. いつも口を開けている
  • 06. 鼻や耳の調子が
    悪くなりやすい
    06. 鼻や耳の調子が悪くなりやすい
  • 07. 漏斗胸(胸の真ん中が凹んでいる)
    07. 漏斗胸(胸の真ん中が凹んでいる)

小児の場合は夜間の成長ホルモン分泌が悪くなることで、発育の遅れ、学力の低下につながりやすいことが指摘されています。アデノイドや扁桃腺が大きいことが多く、いつも口が開いて副鼻腔炎や中耳炎など鼻や耳の病気を繰り返すことも多いです。

いびき・OSASの原因

  • 01 肥満による舌の肥大

    肥満により舌自体も大きくなることで、気道が狭まりいびき・無呼吸がひどくなります。

  • 02 扁桃肥大、軟口蓋形態異常

    のどを狭くさせる形態異常があるため無呼吸がひどくなります。手術で改善できる可能性があります。

  • 03 顎の後退および狭小化

    アジア人は民族的に顎の構造が小さく上気道が狭いうえに、現代人は食生活の変化で年々顎が後退しつつあります。そのため気道が狭くなり無呼吸症が増悪することが予想されます。

  • 04 鼻づまり

    特に夜間鼻がつまることで、口呼吸となり舌がのどに沈下しやすくなるため無呼吸がひどくなります。

  • 05 筋力低下

    主に年齢的な因子により就寝時気道を拡げる筋力が低下し無呼吸を起こします。

  • 06 開口呼吸

    ヒトは口を閉じることで舌を口腔内に保持することが可能になります。しかし、口が開いたままで上向きに寝ると舌を口腔内に保持できず、のどに落ち込んでしまうためいびきや無呼吸がひどくなってしまいます。口が開いてしまう原因としては、鼻づまり、無歯顎、年齢による筋力低下や飲酒などがあります。

  • 07 呼吸中枢の機能低下

    ヒトでは延髄の呼吸中枢にて呼吸が調節されています。息を吸う際は、胸郭や横隔膜が広がるだけでなく声帯や軟口蓋のレベルでも気道を拡げるよう調節されています。この気道を拡げる中枢調節の機能が低下すると、舌や軟口蓋のレベルでの気道が狭窄しいびきや無呼吸を生じる要因となってしまいます。
    呼吸中枢は覚醒時に比べて就寝時に機能が低下しますが、その程度は人によって違うため同じような体型や年齢であってもいびき、無呼吸の程度が違ってしまうことがあります。

OSASの治療

CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)

CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)

気道が塞がれないようにする治療です。
CPAP療法は、装置からホース・マスクを介して空気圧を気道に送り、常に陽圧にしておくことで空気の通り道が塞がれないようにする治療です。重症のOSASではこの治療が第一選択となります。日中は装着する必要がなく、夜間睡眠時に装着します。(図1、図2、図3)

【図1】Fisher&Paykel SleepStyle

【図1】Fisher&Paykel SleepStyle

【図2】Philips DreamStation

【図2】Philips DreamStation

【図3】CPAP装着下での就寝風景

【図3】CPAP装着下での就寝風景

CPAP療法により夜間の無呼吸が改善し、熟睡感や目覚めの改善、日中の眠気や夜間トイレ回数の減少などが見込めます。また、高血圧や糖尿病などの生活習慣病改善効果も報告されています。
CPAP療法の特徴として、治療奏功率(その治療で実際に治療効果を認める率)は非常に高く、侵襲が少ないのがメリットです。逆にデメリットとしては、CPAP療法のアドヒアランス(実際にその治療を積極的に行ってもらえる率)がやや低いため定期に通院のもと医師による管理と指導が必要となります。

また、この治療はメガネと一緒で使用し続けないと効果が続きません。最初は慣れるのに3ヶ月程度かかり、ご本人が使いやすいように医師がCPAP機器の設定をカスタマイズして参ります。CPAP機器が合わないと感じた場合に、機種を変更することでうまく使えるようになる患者様も多くいらっしゃいます。
詳しくは当院にご相談ください。

マウスピース

マウスピース

口腔内装具で気道を拡げる治療です。
OSASの治療に歯科装具で治療する方法で、スリープスプリントととも言われています。就寝時のみ装着します。装着すると自然に口が閉じ、下顎が上顎より前方に出た状態で固定されます。下顎が前方に出ることで、のどの空間が普段よりも広く保たれます。

マウスピースはCPAPに比べてアドヒアランス(実際にその治療を積極的に行ってもらえる率)が高いの特徴です。しかし、下顎の前に出せる距離は個人によって違いがあるため、治療奏功率(その治療で実際に治療効果を認める率)はあまり高くありません。肥満がなく顎が小さい方であれば7割程度の方で効果を認めております。

【図4】マウスピース

【図4】マウスピース

当院ではマウスピース作成を専門の歯科医師に依頼しています。マウスピース完成後はポリソムノグラフィー検査にてマウスピースの効果判定をしっかりと行い、効果を確認してから長期で使用していただいております。
マウスピース作成の費用は、睡眠時無呼吸症と診断されれば健康保険が適用されます。

手術治療

手術治療

根本的な治療が期待できます。
小児の多くや成人の一部でOSASの原因となるアデノイドや口蓋扁桃腺の肥大などの場合は手術治療が有効な場合があります。
これらの手術が必要だと判断した場合は、提携病院をご紹介しております。
成人の扁桃腺および咽頭の手術については、①OSASが重症でない、②扁桃腺が大きい、③肥満がない、④45歳以下などを満たすと根本的治療効果が高いことが分かっています。

【図5】手術治療

【図5】手術治療

OSASの一因として、またはCPAPの使用率低下の原因として鼻づまりがあります。鼻中隔弯曲症などの鼻内の形態異常やアレルギー性鼻炎が鼻づまりに関係していることが多く、鼻づまりはお薬ではなかなか治りにくいのが現状です。

当院では鼻づまりに対して短期滞在下に手術が可能です。手術後は約1ヶ月程度CPAPを中止していただく必要がありますが、手術後CPAPの装着が非常に楽になり装着率が改善している患者様はたくさんいらっしゃいます。

OSASの患者様は全身麻酔での手術前後で呼吸器や循環器的な合併症が出やすいことが報告されています。当院では局所麻酔での手術経験が豊富です。鼻づまりの手術について詳しく知りたい方は是非とも当院にご相談ください。

減量

減量

肥満はOSASの原因としても重要であり、咽頭(のど)の特に舌周囲に脂肪が沈着しOSASを起こします。
当院では減量の目標として、まずは以下の3つのうち一番軽い方法を選んでもらっています。

  • 【身長(cm)-100】Kg (例:170cmであれば70Kg)
  • 現在の体重の10%減少  米国の研究では10%の減量でAHIは26%減少した報告あり
  • 20歳時の体重を目指す
【図6】減量

【図6】減量

減量がある程度すすんだ時点で一度無呼吸の検査を行います。その結果によって治療法を変更(CPAPからマウスピース、マウスピースから側臥位睡眠)できる可能性があります。
減量は根本的な治療となりますが、減量が成功するまでは時間がかかることが多く、それまではCPAPやマウスピースを用いた治療を行う必要があります。

側臥位睡眠

側臥位睡眠

いびきや無呼吸の患者様に睡眠検査を施行した際、睡眠中の体位によっていびきや無呼吸の程度が増減することがわかっています。一般的に、仰臥位よりも側臥位の方が軽減していることがよくあります。
主に開口呼吸や小顎症の患者様は、仰臥位で睡眠の際、重力で舌がのどに落ち込みます。側臥位睡眠では、舌の重力がのど以外の方向に働くためいびきや無呼吸が軽減されると考えられています。
しかし、一晩中同じ姿勢を保持し続けることは難しく、側臥位睡眠は非常に不安定な治療と言えます。そのため、CPAPやマウスピース、手術といった治療の方が安定性が高いかもしれません。しかし、これらの治療で効果を認めなかった場合や、うまく治療を続けられなかった場合に側臥位睡眠を併用することでより高い効果が見込まれる場合があります。
なお、側臥位睡眠を保持する様々な枕が販売されています。当院での精密検査では体位によるいびきや無呼吸の程度の違いを見ることも可能です。気になる方は医師にご相談ください。

いびきについて

いびきについて

いびきと無呼吸症はどう違うの?

いびき自体は就寝時に「いびき」という音が発生し、周囲の方がうるさくて眠れなくなるといった現象です。OSASに合併して起きることが多いですが、OSASを伴わず音が問題となってしまう「いびき」も存在します。OSASを伴わない、またはOSASは軽度でも音としてのいびきが問題となる場合に単純性いびき症と呼びます。OSASは社会的影響や合併症が問題となる疾患ですが、いびきは周囲への騒音として問題となる疾患となります。

いびきの原因について

当院ではいびきの原因を様々な検査を通して精査し、いびきの治療に結びつけて参ります。
いびきの原因には「いびき・OSASの原因」にあるようなものがあります。
呼吸障害や睡眠障害などが軽い場合で、いびきの治療を希望される場合、原因に合わせたいびきに対する治療を行って参ります。

当院で行っているいびきの治療について

睡眠時無呼吸症を認めない、もしくは軽度の場合のいびきを単純性いびき症と呼びます。当院では単純性いびき症に対する治療も行っております。

いびきの治療には、減量、マウスピース、手術などがあります。特に手術には鼻づまりに対する手術以外に、いびき対する咽頭(のど)の形成手術があります。レーザーを使った軟口蓋・口蓋垂切除術(LAUP)は術後の副症状が問題となりAmerican Academy of Sleep Medicine(AASM)でいびきやOSASに対する治療として推奨しないと明記されています。そのため、当院ではLAUPは行わず、全身麻酔下にSuture suspension techniqueの一つであるCWICKsという手術法を行っています。この手術法は日本にて開発された非常に低侵襲の手術法です。いびきの振動を作る膜状のひだを切除後、特殊な吸収性の縫合糸を用いて軟口蓋を前上方に挙上させ、鼻からのどへの空気の通り道を狭窄しにくくさせます。低侵襲であるため術後の副症状も出にくく、いびき音の改善も既存の治療と同等であることが示されております。

【図7】いびき対する咽頭(のど)の形成手術

【図7】いびき対する咽頭(のど)の形成手術

  • 1.いびきをかきやすいのどの形態
  • 2.膜状のひだ (丸に囲まれた部分)を切除し、軟口蓋の一部を切開して翼突下顎縫線 (★) を出す
  • 3.吸収性創傷閉鎖デバイスにてひだを縫合し、軟口蓋を上前方に挙上する
  • 4.術後にのどが拡がっている