鼻中隔弯曲症 Deviated Nasal Septum
よく通る鼻とは?
よく通る鼻とはどういった鼻なのでしょうか?
鼻の中には鼻腔と呼ばれる空気の通り道があります。
鼻腔は鼻中隔という壁【図1,2,3の①】によって左右に隔てられています。また、鼻腔の外側の壁から下鼻甲介という飛行機の羽根【図1,2,3の②】のような構造物が内側に向かって生えています。
鼻腔の通り道は気温の変化や花粉など様々な刺激により広くなったり狭くなったりしています。もし片方が通っていても、反対側が完全に塞がっていると鼻づまり感を生じてしまいます。
よく通る鼻とは、この鼻中隔と下鼻甲介に挟まれた空気の通り道である総鼻道【図1,2,3の③】が常にしっかり保たれている鼻だと私たちは考えております。
【図1】正常な鼻腔
- ①鼻中隔
- ②下鼻甲介
- ③総鼻道
【図2】正常な鼻腔のCT画像
- ①鼻中隔
- ②下鼻甲介
- ③総鼻道
【図3】正常な鼻腔の模式図
- ①鼻中隔
- ②下鼻甲介
- ③総鼻道
鼻中隔弯曲症について
【図4】鼻中隔
鼻中隔は手前に軟骨が、後方に上下から伸びてきたそれぞれの骨があり一枚の壁を作っています。
犬や猫などの動物と違い人間の鼻腔は上に頭蓋(脳が入っているところ)、下に口腔で挟まれているため鼻腔が縦に拡がるには限界があります。また、鼻中隔を構成する軟骨や骨はそれぞれ成長の止まる時期にずれがあります。そのため、体の成長とともにこれらの骨が伸びすぎると、左右に鼻中隔が曲がってしまいます【図5,6,7の④】。また、外傷により曲がってしまうこともあります。
日本人の9割に若干の曲がりがあると言われていますが、曲がりが強いと鼻の中の通り道が狭くなってしまい【図5,6,7の⑥】、様々な鼻症状を呈することがあります。
【図5】つまりやすい鼻の内視鏡所見
- ④弯曲した鼻中隔
- ⑤粘膜が厚くなった下鼻甲介
- ⑥狭くなった総鼻道
【図6】つまりやすい鼻のCT画像
- ④弯曲した鼻中隔
- ⑤粘膜が厚くなった下鼻甲介
- ⑥狭くなった総鼻道
- ⑦中鼻甲介蜂巣
【図7】つまりやすい鼻の模式図
- ④弯曲した鼻中隔
- ⑤粘膜が厚くなった下鼻甲介
- ⑥狭くなった総鼻道
- ⑦中鼻甲介蜂巣
- ⑧骨が厚くなった下鼻甲介
【図8】骨が厚い下鼻甲介のCT
⑧骨が厚くなった下鼻甲介
鼻がつまりやすい鼻腔とは
鼻がつまりやすい原因には、
- 鼻中隔弯曲【図5,6,7の④】
- 下鼻甲介の形態異常(粘膜の肥厚【図5,6,7の⑤】や骨の肥厚【図7,8の⑧】、骨の張り出し)
- 中鼻甲介蜂巣【図6,7の⑦】
- アレルギー性鼻炎
などがあります。
中鼻甲介蜂巣とは、本来一枚の羽根状でできている骨の中に空洞ができて、お餅が膨らむように大きくなってしまい、周りの空気が通るところが狭くなってしまうものを言います。
これらが鼻腔の通り道である総鼻道を狭くし、鼻がつまりやすくなります。
鼻中隔弯曲や下鼻甲介の形態異常、中鼻甲介蜂巣などは手術で改善することが可能です。
鼻中隔弯曲症の症状
鼻づまり | 最もよく認める症状です。 両方の鼻づまりを認める方もあれば片方の鼻づまりを認める方もおり、時間帯によって鼻づまりの左右が変わる交代性鼻閉を訴える方もいます。 |
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嗅覚障害 | においの神経や粘膜が直接障害を受けているわけではありませんが、鼻中隔が弯曲していることにより嗅粘膜ににおいを含んだ空気が流れなくなり臭いがわかりづらくなることがあります。アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎を合併すると障害がより強くなります。 |
いびき・睡眠障害 | 鼻がつまるため口呼吸となります。そのため、のどの周囲にある筋肉の活動性が低下し気道を広げることができなくなり、いびきをかきやすくなります。また、鼻づまりは中枢神経に直接影響し、睡眠の分断化を起こし睡眠障害につながることが報告されています。 |
鼻出血 | 鼻腔が狭くなることで気流が乱れ、粘膜に炎症が起きやすくなったり出血を繰り返しやすくなったりします。 |
頭重感 | 鼻づまりが原因で激しい頭痛を訴えることは少ないですが、鼻づまりにより頭の重い感じが続くことがあります。 |
鼻づまりのせいで風邪をひきやすい?
鼻にはもともとゴミを取る空気清浄機、加湿器及び加温機のような機能があります。また、鼻で息を吐くときに空気中の水分を再吸収する機能もあります。
鼻で息を吐くときに空気中の水分を再吸収する機能が、鼻がつまることにより正常に使えなくなることで口呼吸となるため、風邪をひきやすくなると言われています。
鼻中隔弯曲症の治療
鼻中隔弯曲症は骨の曲がりですので、基本的には手術でしか改善できません。
症状がある場合、まずは合併するアレルギー性鼻炎や肥厚性鼻炎などに対し、鼻スプレーや抗アレルギー薬などの内服薬を処方いたします。
これらの治療でも症状が改善しない場合は手術治療を行います。年齢によっては手術ができないこともあります。